AI事業者ガイドライン(第1.2版)の「AI利用者」とは?ChatGPTを使う中小企業が求められること
「AI事業者ガイドライン」は、AIを開発する大企業向けの話だと思われがちです。けれども、仕事で ChatGPT や Copilot を使っている会社は、それだけで「AI利用者」という立場にあたり、ガイドラインの中に専用の章があります。
この記事では、総務省・経済産業省の概要資料(第1.2版)をもとに、小さな会社に関係する所だけを抜き出しました。
※ この記事は一般的な整理で、法的な助言ではありません。正確な内容は原文(総務省・経済産業省の公表資料)で確かめてください。
1. AI事業者ガイドラインとは
- 総務省と経済産業省が出している、AIの開発・提供・利用で必要な取組の考え方をまとめた指針です。最新は第1.2版(令和8年=2026年3月31日)
- 本編は「どんな社会を目指すか(基本理念)」と「どんな取組をするか(指針)」、別添は「具体的にどう取り組むか(実践)」という作りです
- 技術や国際的な議論に合わせて更新を重ねる「Living Document」とされています
- 法律ではなく、事業者の自主的な取組を後押しするためのものです。取組は、リスクの大きさや会社の資源の制約に配慮しつつ進めることが重要とされています。小さな会社が大企業と同じことをする前提ではありません
2. ChatGPTを業務で使う会社は「AI利用者」
ガイドラインは、AIに関わる事業者を3つに分けています。
- AI開発者:AIシステムを開発する事業者
- AI提供者:AIを自社のサービスや製品に組み込んで提供する事業者
- AI利用者:事業活動において、AIシステムやAIサービスを利用する事業者
総務の担当者が ChatGPT で文書を作る、営業が Copilot でメールを書く、事務所で Gemini に議事録を要約させる。こうした使い方をしている会社は「AI利用者」です。社員が個人の判断で使っている場合も、業務で使っている以上は会社としての扱いを考える必要があります。
3. AI利用者に期待されていること(第5部の要点)
概要資料では、AI利用者は「AI提供者が意図した範囲内で」適正に使い続けること、そのための知見を身につけることが期待されています。項目を小さな会社向けに言い換えると、次のとおりです。
- サービスの決まりの範囲で使う:AIの提供元が定めた利用上の注意と規約を守る。提供された説明資料を保管して活用する
- 答えをうのみにしない:AIの出力の精度やリスクを理解したうえで使う。最後に判断するのは人
- 偏りに気をつける:入力やプロンプトに偏りがないかに注意し、責任をもって出力を業務に使う
- 個人情報を不適切に入力しない:AIサービスへの個人情報の不適切な入力に注意を払い、プライバシー侵害について情報を集めて防止を考える
- 機密情報を不適切に入力しない:提供元のセキュリティ上の注意を守り、機密情報等を不適切に入力しないよう注意を払う
- 関係者に説明する:AIの結果を事業の判断に使ったときは、関係者に合理的な範囲で情報提供する。人の評価の参考にするときは、人が合理的に判断して説明責任を果たす
- 問い合わせに応じる:関係者からの問い合わせ窓口を合理的な範囲で設ける
このうち、小さな会社で今日から事故につながりやすいのは4と5(個人情報と機密情報の入力)です。
4. 「個人情報を不適切に入力しない」を具体的にすると
ガイドラインは「不適切に」とだけ書いていて、何が不適切かの線は会社で決める必要があります。個人情報保護法の安全管理の義務は、ガイドラインとは別に必ずかかります。現実的な線引きの例です。
- 入れない:顧客・取引先・従業員の氏名、住所、電話、メール、マイナンバー、口座番号、病気や家族の事情など、人が特定できて困る情報
- 使うAIを決める:個人の無料アカウントは使わない。学習に使われない設定か、業務用プランに限る(AIごとの設定は下の一覧)
- 伏せてから入れる:「株式会社山田商事 山田太郎様」を [会社名1] [氏名1]様 に置き換えてから貼り、答えが返ってから元に戻す
- 入れてしまったときの手順を決める:履歴の削除、上長への報告、必要なら本人・委員会への対応(AIに個人情報を入れてしまったら)
2026年の個人情報保護法の改正で、業務で顧客情報を AI に貼ってよくなったわけではない点も注意です(個人情報保護法の改正(2026年)とAI)。
5. 小さな会社がまずやること(30分でできる3つ)
- 社内ルールを1枚にする:使ってよいAI、入れてはいけない情報、伏せ方、困ったときの連絡先。ひな形は 生成AIの社内ルール例
- 使っているAIの設定を確かめる:学習に使われる設定のままになっていないか(ChatGPT / Copilot / Gemini)
- 貼る前のチェックを習慣にする:30秒チェックリスト を机に貼っておく
税理士・社労士・弁護士・医療など守秘義務のある仕事では、もう一段厳しく考える必要があります(生成AIと守秘義務)。
名前と番号は、貼る前にブラウザの中で伏せる
私たち(合同会社mico)は、氏名・会社名・住所・電話・メール・マイナンバーらしき番号などを、ブラウザの中だけで [氏名1] のように置き換え、AIの答えを元の名前に戻す無料の道具「AI伏せ字」を作りました。文章は外部に送信しません。Chrome・Edge に入れておけば、ChatGPT や Copilot に貼る前に右クリックで伏せられます。
体験ページ:こちら
※ 判定は機械的なルールなので、見落としがありえます。AIに送る前に、伏せ字の文章を目で確かめてください。この記事はガイドラインへの適合を保証するものではありません。
出典:総務省・経済産業省「AI事業者ガイドライン(第1.2版)概要」(令和8年3月31日)。本文の言い換えはこのサイトによるものです。